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脳機能とリハビリテーション研究会ブログ

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2012年第1回 脳リハ研定例勉強会のご報告

去る6月17日に行われました第1回定例勉強会のご報告をさせて頂きます。
参加者は20名弱でした。どの報告も興味深く、珍しいものでした。
今回は発表者本人による抄録・感想を以下に掲載させて頂きました。石井大典氏による報告は都合上、本ページでの記載は控えさせて頂きました。


プチ神経学講座

「半側空間無視と半盲」
   新國彰彦(茨城県立医療大学大学院)

似て非なる脳損傷後の徴候に、半盲と半側空間無視(以下、USN)がある。今回は、両者の相違を、対象なき視覚体験である幻視という観点から整理した。幻視を訴える半盲患者に関する報告は比較的多く散見され、特に右半球損傷後に多いようである。幻視の内容は、閃光・単純図形(要素性幻視)からヒトや動物(有形性幻視)まで様々であるが、一貫している点は、半盲患者は、病巣と反対側(半盲側)に幻視を訴えることであった。一方、USN患者の幻視に関する報告は非常に少ないものの、USNを伴ったアルコール依存症患者の一知見では、病巣と同側(非無視側)にのみ有形性幻視を訴えたことが記されている。近年、後頭葉を電気刺激し人工的に幻視(閃光)を生じさせた場合、幻視体験と側頭-頭頂接合部の活動が相関することが報告された。これを踏まえると、少なくとも頭頂葉性のUSNでは、無視側に幻視体験を作り出すことができないのかもしれない。


症例検討
「余剰幻肢を呈した症例が訴える3本目の腕に対する評価」
   山本竜也(筑波大・院)

余剰幻肢とは自らの手足の数が増えたように感じる症状のことである。本症例は橋出血後5年を経ているにもかかわらず、未だ2本目の右腕(他者には見ることができない腕)の存在を感じ続けている。この2本目の右腕とはどのような腕なのか?という点に着眼した評価を様々視点から実施した。
本勉強会では『今後の評価をどのように進めていくか』『どのようなアプローチが高い有効性を持っていそうか』などに関して、多くの方々と活発な議論を交わすことができた。大変参考になるものが多く、今後の評価・アプローチに生かして行こうと思う。


「lateropulsionを呈した症例-そのメカニズムの検討-」
   岡本善敬 (茨城県立医療大・院)

Lateropulsionとは一側へ身体が傾く現象で、延髄、小脳、橋などの病変で生じた例が報告されている。症例は60歳代、男性。左延髄外側梗塞の診断で、主訴は左側へ身体が傾くことによる立位、歩行障害であった。左上下肢の軽度運動失調と左指先の触覚低下を認めたが、めまい、眼振、構音障害、嚥下障害、運動麻痺はなかった。本症例のMRI画像では左延髄背外側に梗塞巣があり、この部位に位置する姿勢制御に関する知覚を送る後脊髄小脳路との関連が推察された。


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   勉強会風景

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   勉強会風景
by noureha | 2012-07-01 16:44 | 勉強会
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