2013年2月17日に開催されました第4回定例勉強会の演題内容をご報告します。
諸事情により症例報告の1演題分の内容は省略させて頂きます。
プチ神経科学講座
「慢性疼痛の病態と神経機序」
大塚裕之 (千葉大学大学院医学研究院)
本講座では、臨床上観察されることが多い慢性疼痛の病態と神経機序の概論が紹介されました。
疼痛の病態は、侵害受容性疼痛・神経因性疼痛・心因性疼痛があり、臨床上重複して観察されることが示されました。疼痛の慢性化には、うつ症状・不安などの「心理的要因」、ソーシャルサポートなどの「社会的要因」、疼痛回避行動などの「行動学的要因」が関与することが説明されました。
具体例として、「腰痛」の心理的要因が挙げられ、不安が疼痛の難治化に影響を及ぼすことや不安を考慮したリハビリテーションプログラムの重要性が示されました。
症例検討
「疼痛と不安が遷延した脳卒中例に対する医療連携と認知行動療法的介入」
大塚裕之 (千葉大学大学院医学研究院)
本発表では、長期的に疼痛と不安が続いた脳卒中例に対するアプローチが報告されました。
その病態は、「疼痛」、「不安・苦悩」、「身体機能低下」による悪循環に陥っている可能性が提示されました。リハビリテーションでは、慢性疼痛の機序についての教育と疼痛回避行動を抑える方法が用いられ、その結果、疼痛とうつや不安は低下しておりました。本症例報告のような、疼痛の認知およびその行動を制御するアプローチは、中枢疾患・整形外科疾患問わず応用できる方法かもしれません。
「右頭頂葉内に限局性病巣を有する症例:左半側空間無視及び着衣障害」
山本竜也(筑波大学大学院、 産業技術総合研究所)
本発表では、右角回/縁上回の皮質下に限局性病巣(血腫)を有するViewer-centered 型左半側空間無視症例が報告されました。
これまでに右角回/縁上回皮質下領域の損傷はViewer-centered 型左半側空間無視の発症に関与することが示唆されています。しかし、このようなアイディアは右角回/縁上回を含む広範囲な病巣を有した症例によるものがほとんどです。そのため、限局性病巣を有した左半側空間無視症例に関する本症例報告は大変貴重であると考えられます。行動評価において、本症例は屋外散歩時に街中を右回りに散策してしまう傾向が観察されていました。このような観察は限局性病巣を有した左半側空間無視症例ならでは評価結果であり、大変興味深いものでした。
本報告は、右角回/縁上回の皮質下領域がViewer-center型左半側空間無視に関与するという先行研究のアイディアをさらに支持する内容であると考えられます。
勉強会(症例報告)の風景